技術情報

垂直入射法と残響室法での吸音楔の吸音率について

2022/12/18

近頃、業務用空調の騒音データ偽造のニュースが頻繁に出ており、それを機に世間が騒音数値に目を向け、その信憑性を疑い始めていると思われ、各メーカーは自社の音響測定室は大丈夫かと心配しているようです。なぜなら、無響室に関する技術的な問い合わせが増加しているからです。

その中でよく聞かれるのが、当社の吸音楔の吸音率とカットオフ周波数は大丈夫かという質問です。

この記事では吸音楔の吸音率について説明していきたいと思います。

まず吸音率について、実は二つの概念があります、それは吸音材単体の吸音率と無響室全体の吸音率です。

吸音材単体の吸音率はつまり吸音材に入射した音波をどのぐらい吸音しているかの話で、ある周波数以上の音波を約0.99(0.985)以上吸音できたら、吸音楔単体の吸音率をカットオフ○Hzと言います。

例えば、250Hz以上の音波を約0.99以上吸音できたとしたら、この吸音楔の単体吸音率は250Hzだと言います。

ただ、これはあくまでも吸音楔単体の話しで、最近もっと注目されているデータは無響室(または)半無響室全体の吸音率です。

つまり天井壁(または床)全面に吸音楔を貼り付けた状態で、この吸音楔の集団はどこまで吸音できているかを表現するには、測定可能下限周波数という用語を使います。

例えば、この空間で250Hz以上の音波を約0.99以上吸音できたとしたら、この無響室(または半無響室)の測定可能下限周波数は250Hzだと言います。

実際に音響測定する際には、どの周波数まで測定するのかは測定可能下限周波数によって決まるので、実用性の高いパラメーターになります。

さて、今日は吸音楔単体の吸音率は二つの測定方法があり、御紹介します。それは垂直入射法と残響室法です。

垂直入射法は音響管の入射前後の音圧に基づいて計算するのです。このような測定方法は無響室を使用する実際のシーン非常に近いので、よく使われています。
例:ISO 10532-2 音響〜インピーダンス管による吸音率及びインピーダンスの測定〜定在波比法

残響室法の測定現場

ただ、たまに残響室法で測定する場合もあります。残響室内で、吸音材の有無2パターンで、音圧レベルが60dB減衰する時間を測って、以下の式で吸音率を求めています。

α:残響室法吸音率
V:残響室容積
C:音速
S:吸音材の面積
T1:テスト材料を入れていない残響時間
T2:テスト材料を入れた残響時間

式によると、残響室が大きいほど(Vが大きいほど)データが良くなります。そのため、無響室メーカーに問い合わせする際に、提供してきた吸音楔吸音率データはどのような方法で測定したのかを確認したほうが良いかもしれません。

実際は垂直入射法と残響室法では同じ吸音材でも異なるデータになります。両者を混在してしまうと誤解が生じてしまうため注意が必要です。

以上、吸音楔の吸音率の紹介でした。

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