技術情報

遮音シートは無意味?

2022/09/06

遮音シートとは、ゴムやアスファルト系を主とした軟質系シートで、床壁天井の遮音下地材として一般的なものですが、「本当に遮音するの?」「どれくらい遮音するの?」と疑問を持たれる方も多いと思いますので、本記事では、音の専門会社である当社の見解を記載してみます。

先に申し上げておきますと、当社では遮音シートは使用していません。その理由はシンプルですが、コストに見合う遮音効果を得られないため、遮音シートではなく他の遮音材を使用しています。

遮音シートの遮音効果について

① 遮音シートはボード状のもの、ロール状のものなど様々なメーカーが販売しています。基本的にはどの遮音シートも重いです。重い材料は遮音効果があるといわれています。ですが、これはそうとも限らないのです。

別記事「質量則は遮音量の計算根拠にならない」にあるように、遮音シートに遮音効果が全くない訳ではありません。ただ、効果は限定的です。

※ 抜粋:「防音をするには重い材料を使わなければならない」これはよく言われることですが、その理由の元になっているのが質量則です。ですが、質量則だけで遮音量を計算することは危険です。

② 遮音シートは各社で遮音性能データ(音響透過損失データ)を公表しています。非常に素晴らしい透過損失データである場合もあります。ですが、これは遮音シート単体のデータです。遮音シートは石膏ボードや鉄板に貼り付けて使うことが多く、単体で使用はしないです。

遮音は足し算にはなりません。遮音シートのデータ上、透過損失が30dB@500Hzだとしても、壁に貼って遮音量がプラス30dBされる訳ではありません。壁材と遮音シートを合わせた遮音量がわからなければ意味がないです。

では、なぜ各メーカーで透過損失データを公表しているのか?それは同条件での比較のためですがこれも少し問題がありまして・・測定場所も測定方法も違うことが多く比較が出来ないことが多いです。

なので、透過損失データは「ふーん」という程度に見ておけば良いかと思います。

③ 遮音は音を跳ね返すことですから、重くて硬い材料の方が良いですが、遮音シートは、重くて柔らかいです。遮音シートは、遮音材というよりも板の制振材に近いかと思います。ただ、遮音シートの制振は125Hz以上が対象かと思いますので、制振という目的だけであれば遮音シートを使わずとももっと安価で簡単な方法があります。

つまり、遮音シートはよくいえば、遮音と制振のハイブリッドというイメージですが、本来は目的に合わせて適切な材料を選定しなくてはなりません。当社は、遮音材としては遮音シートではなく他の材料を選定しますし、制振材としても他の材料を選定します。遮音シートは決して安くはないです。その方がコストを抑えられます。

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