技術情報
メンツプロジェクト
2022/03/20
- 無響室・防音室のソノーラ
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筆者は最近、海外の無響室を手掛けています。
そして、海外の某エアコンメーカーの無響室を拝見しましたが、その無響室は、20年前に建てられたものでしたが、様々な問題がありました。以下に列挙します。
- ドアのハンドルが壊れていて締まらない
- 無響室の床ピットが水没していた
- 無響室内は異臭を発生し目も開けられない
- 吸音クサビがカビで黒ずんでいた
- 被測定物が大きすぎて自由空間を損なっている
この無響室内には巨大なエアコンが設置されており、配管が繋がっていたのですが、配管から水が漏れており、無響室のピットに長年水が溜まり続けていたのです。その対処をしていないので、水が腐り、吸音クサビがカビだらけになっていました。作業者はその環境で測定をしていたのです。
何故筆者が呼ばれたのかと申しますと、現地の防音メーカーに呼ばれ、この無響室を移設したいという相談を受けたからです。そして、問題点を挙げ、最低でも吸音クサビは新しいものに交換した方が良いのでは?またこの測定物をはかるには無響室が小さすぎるので大きくした方が良いと伝えたところ、「この無響室はメンツプロジェクトであるため、部屋があれば良い。測定出来なくても、カビが生えていても問題ない、作業者も長年この環境にいて病気になっていない」と言われました。
筆者は、一応無響室の専門家として、残念ながらこの案件はお受け出来ないとお断りしました。
また、メンツプロジェクトという言葉、恥ずかしながら初めて聞きました。このメーカー担当者の言うメンツプロジェクトとは、所轄の政府に対して「きちんと無響室で測っていますよ」「我々は音響開発に力を入れていますよ」とアピールする意味でした。つまり、その無響室に無駄な金をかける必要はないということです。大きな吸音クサビが付いていれば、本格的な無響室に見える。ただそれだけのために建てられた部屋だったのです。
そしてもう一つ、同行した防音メーカー担当者は、この無響室の吸音性を測定し始めました。これも驚いたのですが、ハンディタイプの普通騒音計で測定していたのです。その担当者曰く、無響室の暗騒音設定値は30dB(A)、カットオフ周波数は63Hzである。だから、暗騒音が63Hzで30dB以下ならカットオフ周波数は63Hzだと・・
以上、海外での無響室に関する驚きのお話でした。
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