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吸音材:低周波域の吸音率を高める方法
2024/09/28
- 無響室・防音室のソノーラ
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先日、ある方から筆者に「他社が開発した無響室用低周波吸音材」のプレスリリース記事を紹介されました。その記事を見て筆者は「またか・・」と思いました。
低周波吸音材の開発
10年程前から、特に「低周波域の吸音率を高めようというテーマ」で無響室に使用する吸音材の開発が国内外で進められています。そのキッカケは間違いなくF社の広帯域吸音材の登場によるものです。
当社も低周波吸音の研究を行いました。国内他社でも、様々な吸音材が生まれました。
→結果、どの吸音材もF社の広帯域吸音材と同じようなものになってしまいました。
▽こちらは2020年に投稿した当社の記事です。
吸音材の厚さ=吸音材の性能⁈
文中にある下記のグラフをご覧ください。
広帯域吸音材は、平板積層型:四角いブロック形状のものが多いです。
一般的な無響室の吸音材はクサビ形状です。両者を比較すると、平板形は低周波域の吸音率が高く、クサビ形は高周波域の吸音率が高いです。
つまり、「低周波域の吸音率を高めようというテーマ」自体は難しいものではなく、吸音材の形状を変えるだけでクリア出来ます。
形状を変えること以外には、吸音材の内部に共鳴体(樹脂や膜など)を入れるなどの方法もあります。
ですが、これらの方法では、高周波域の落ち込みを解消することが出来ませんし、色々何かの材料を付け足したりすれば、その分吸音材の単価も上がっていきます。それって商品としてはどうなの?ということにもなります。
他社ではこの高周波の吸音率が落ち込んだ状態での吸音材を商品として公開しているところもありますが、無響室を使用した音響測定では、高周波域の音も測定しますので、ここの吸音率が落ち込んでいては無響室の吸音材として適していません。
低周波域の吸音率を高める→高周波域の吸音率が落ち込む傾向
高周波域の吸音率を高める→低周波域の吸音率が落ち込む傾向
これらは、防振材の共振周波数と同じように、吸音率の高い帯域をシフト・調整しているだけともいえますので、低周波域の吸音率が高い吸音材だとしてもそれは一概に優秀な吸音材ではないと考えています。低周波帯域のみ吸音率を高めることは、技術的に難しいことはありません。
全周波数帯域で吸音率を高めるには?
広い帯域で吸音材の吸音率を高めることも出来ますが、吸音率のMAX値が落ち込む傾向にあります。吸音材の容積を変えずに、全帯域で高い吸音率を確保するということは、なかなか難しいようです。
以下のデータをご覧ください。これはある吸音材のラボテストデータです。
* JIS A 1405: 音響—インピーダンス管による吸音率及びインピーダンスの測定—定在波比法
100Hzより下もそれなりに吸音率が高く、280Hz付近から0.9以上となっていますが、0.985には達していません。(これは約350ミリ厚の平板型吸音材です。)500Hzより高い帯域の吸音率は記載されていませんが、間違いなく落ち込んでいます。
あなたが、吸音材の開発者だとします。このデータをもって「新しい広帯域吸音材を開発した!」といえるでしょうか?? 広帯域といえば聴こえが良いですが、広帯域=どの周波数帯でも微妙な性能ともいえます。
冒頭に記載した「他社が開発した無響室用低周波吸音材」のプレスリリース記事の吸音材も同じようなデータでした。しかも、その吸音材データは残響室法でのデータなので、上記の吸音材の方ですらその吸音材よりも良い性能と思います・・無響室用の吸音材は厚さがあるので残響室法で測定すると異常に良いデータとなりますので何の参考にもなりません。
ですが、これまで述べたことはあくまでの「点」の話です。
点が線になり、面に・・・となれば、落ち込んだ周波数帯域の吸音が出来る可能性が見えてきます。
「点」というのは、これらは吸音材単体での性能でしかないという意味です。
無響室に吸音材を施工する際には、吸音材1つではありません。全無響室であれば、床壁天井の6面に吸音材、半無響室であれば床を除く5面に吸音材を施工します。
そうなると、1個単位で考えていた吸音材の吸音率ではなく、300個なり1000個になります。無響室が大きくなればなるほど吸音材の量は増えていきます。吸音材の配置も変わりますし、部屋の縦横比によっては音の跳ね返り方も変わります。
そして、過去の投稿記事(ラボテストのデータ=リアル?)で当社は以下のように述べています。
→吸音率データはラボテストでの測定データであり、あくまでも参考程度にしかならないということです。逆に、ラボテストで素晴らしい吸音率を発揮した吸音材を部屋全体に施工したら大した吸音性がなかった・・ということもあり得ます。
∴吸音設計には3次元的設計が必要になります。
当社ではこれらの理由から、吸音材単体での吸音率の数値ではなく、無響室の部屋全体の性能を基準としています。
無響室に限らず、コンサートホールなども同様です。コンサートホールの音響設計は3次元設計です。
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