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無響室、無響室業界の変遷(20年間)と未来
2024/10/24
- 無響室・防音室のソノーラ
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- 無響室、無響室業界の変遷(20年間)と未来
当社、ソノーラテクノロジー設立年である2003年から現在まで、無響室や無響室業界はどのように変化したのかを述べたいと思います。
2003年頃 | 主流は一般建築工法の無響室 |
---|---|
2004年頃 | 組立パネル式無響室の登場 |
2005年頃 | 組立式無響室の販売拡大 |
2007年頃 | 海外での組立式無響室の構築 |
2008年頃 | 恒温無響室の開発 |
2009年頃 | 当社工場・研究開発拠点設立 |
2010年頃 | フラットシル遮音ドア開発 |
2012年頃 | ISO3745の改訂 |
〜2020年頃 | 新たな無響室の時代へ |
2022年頃 | イギリスでの無響室受注 |
2023年頃 | 新型吸音クサビBFWの開発 |
2024年 | 本格的海外販売を開始 |
〜現在 | まとめ |
2003年頃:主流は一般建築工法の無響室
当社は、設立当時は、騒音対策を中心としたビジネスを行っており、初めて無響室を手がけた際、無響室業界では新規参入組でした。当時、無響室は非常に高額なものであり、現在の1.5〜3倍近くの金額であったと思います。
無響室の一般的な造りは、下記のようなものでした。当社ではこれを昭和仕様と呼んでいます。(昭和時代から変わらない仕様であるため)
遮音層 | コンクリート+空気 |
---|---|
吸音層 | グラスウール32K+針金フレーム+コーディランクロス |
2004年頃:組立パネル式無響室の登場
当社が無響室を開発、販売を開始するにあたり、当社の得意分野である鋼材を使用した無響室を作ろうと考えました。これは、前述の通り、一般的な造りではなく「本当に無響室に使えるのか?」と業界内では懐疑的に見られていたと思います。しかし、前年から開発を続け実証試験を経て、組立式無響室の製品化を実現しました。
当社が初めて無響室を納入したのが、2004年3月(株)アペックスADSカンパニー様[現在は廃業されているようです]でした。現在とは違い、遮音パネル二重構造と壁厚、重量もかなりありました。
同年、当社は無響室の規格ラインナップを公開、価格破壊レベルに近い定価設定を行いました。入札案件では、他社製無響室の入札価格は当社の倍ということもありました。
また、この頃、日本国内最大級の半無響室(K社)が作られました。(残念ながら当社は受注出来ませんでした。)
2005年頃:組立式無響室の販売拡大
当社は組立式無響室の販売を拡大し、自動車メーカー、家電メーカー等に納入実績を作っていきました。また、以降毎年のように、遮音パネル・吸音クサビの改良を重ね、薄型化、軽量化を推進していきました。
新規参入組かつ安価で奇抜な無響室を手掛ける当社は、業界内では疎ましく思われていたでしょう。某掲示板での批判コメントなども見受けられました。
この頃は、まだ無響室メーカーは多く存在(9社ほど)していました。
無響室は、規格品として定価を公表している会社は当社、当社関連会社以外にはありませんでした。これは今も変わっていません。当社は、無響室は高すぎると思い、適正価格化が必要だと考えた結果です。
2007年頃:海外での組立式無響室の構築
フィリピンのT社に初の海外向け無響室を納入しました。組立式無響室は、文字通りパーツの組み合わせですので、輸出にも適していました。次年度には、アメリカでも無響室を構築しました。
この頃から当社の売上比率のうち、無響室関連の金額が半数を超えました。
2008年頃:恒温無響室の開発
断熱層、特殊空調設備を付加した恒温恒湿無響室を開発。これにより、特殊温度環境下での複合試験を無響室を用いて実施することが可能となりました。
2009年頃:当社工場・研究開発拠点設立
工場・研究開発拠点である富士山テクニカルセンター(静岡県御殿場市)の設立は大きな転換点となりました。これにより、開発の進度は高まり、遮音・吸音層の更なる薄型軽量化を実現しました。
主要無響室メーカーは当社を含め4社ほどとなりました。無響室メーカーは、現在へ至るまでに少しずつ淘汰されていきましたが、それら企業は、昭和の時代から何も変わらない仕様を踏襲し、新たな技術開発を怠ってきたからだと思います。
Automotive Testing Expo(ドイツ)に出展、無響室を展示しました。ここで様々な海外無響室メーカーと情報交換をし、新たな開発テーマも生まれました。
2010年頃:フラットシル遮音ドア開発
フラットシルはドア下部のクツヅリがない特殊ドア構造です。高い遮音性を要求される無響室でも採用する事が出来ました。これは、企業の安全への意識の高まりから生まれたものです。
2012年頃:ISO3745の改訂
無響室の測定法、設計法などの基準であるISO3745が大幅に改訂されたことにより、無響室の在り方が大きく変わりました。日本国内に限らず、海外の無響室メーカーも台頭し、この改訂を機に無響室の需要が高まっていきました。
〜2020年頃:新たな無響室の時代へ
国内ではほとんど競合しなくなりましたが、海外では主要3社と競合することが多くなっていきました。新たな基準に対応出来ない国内メーカーは、国内はおろか海外での販売展開もほとんど実施出来ずにいました。また、技術者不足なども顕在化しつつあり、いくつかの無響室メーカーが廃業しました。
2022年頃:イギリスでの無響室受注
これまでは、海外での受注はほぼ日系企業に限定されていましたが、イギリスの大手電気メーカーの無響室を受注しました。
2023年頃:新型吸音クサビBFWの開発
2020年からBFシリーズとして、米国Dupon社のTybekを使用した吸音材を開発し、新型吸音クサビであるBFWをリリースしました。
2024年:本格的海外販売を開始
自動車音響測定用半無響室(VSAC)のニーズが世界的に高まったこともあり、グローバルサイトを公開、本格的に海外販売をスタートしました。
〜現在:まとめ
2012年が無響室の大きな転換点になったと思います。それ以前から、国内では、昭和仕様である旧タイプの吸音クサビの製造単価が増額(クサビ形状に針金を加工する会社がなくなってきた事など)するなど、なかなか厳しい状況が続いていました。
ここまで読んで頂いた方は一つの疑問がある(かも?)と思います。
それは、なぜ国内無響室メーカーは、新たな無響室を作れなかったのか?ということです。
その理由は大きく下記の2つにあると思います。
- (1)無響室はメイン商材ではなく、開発予算を取らなかった。
- (2)無響室業界の変化、ユーザーニーズの変化を読み取れなかった。
以上、当社設立以降現在まで無響室の変遷を述べましたが、今振り返っても、無響室の設計法、業界を取り巻く環境、海外での需要増など目に見えて変わったと思います。
当社は、専門メーカーとしてこれからも先を見据えた開発を推進し続け、業界の発展に貢献していきたいと思います。
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