技術情報

中国の無響室について

2021/04/02

当社は、世界各国に無響室の納入実績がありますが、中国の企業(日系企業を除く)への納入実績はほとんどありません。ですが、中国という大国でも当然、無響室の需要はあるはずです。そこで色々と調べてみることにしました。

中国では百度(Baidu)という検索エンジンが有名です。無響室は中国語で「消声室」といわれます。試しに、百度で「消声室」と画像検索をすると・・・出るわ出るわ、当社の無響室の画像が・・・しかも、同じ写真が様々な無響室メーカーウェブサイトに掲載されています。もはや当社の無響室は、中国ではフリー素材のように使われています。そして驚いたのが、無響室がネットショッピングで安価に売られているということです。

世界的にみても、無響室は非常に高額な設備であり、その構築には高い技術力が必要と思いますので、筆者は中国のネット上での見え方というものに困惑したと同時に興味を持ちました。

無響室の関連規格として、有名なものはISO 3745シリーズです。これが、日本ではJIS規格、中国ではGB規格として、多かれ少なかれ編纂されています。
中国では、ISO 3745→GB 50800にあたります。GB 50800-2012版を翻訳してみたところ、無響室の音響、自由音場、建築設計についての記述がありました。例えば、

  • (1)機械の音響パワーレベルや指向性を測定する場合は正方形が推奨
  • (2)吸音クサビのベースは400×400㎜が推奨
  • (3)吸音クサビは波長に合わせた長さにする

等、内容的には基本中の基本のことがメインで書かれていますが、その内容は今や非常識とも言えるものであり、何十年も前で止まってしまっているように思います

無響室は世界中で年々関連技術の向上が図られております。いかに薄い吸音層で、いかに高い吸音性を発揮するか等、各メーカーがしのぎを削っています。
※ 参考URL:ISO3745:2012を基準とした無響室設計法に対する現実と理想 | 無響室・防音室のソノーラテクノロジー株式会社(公式サイト) (soundenvironment.jp)

そして、当社の懸念が表面化することが起きました。

先月(2021年3月)中国の大手電気部品メーカーJ社と無響室についてWeb会議をする機会がありました。J社はR博士という音響の博士号を持つという方が出席されました。会議では、当社の無響室の遮音パネルの厚さと吸音クサビについてデータを用いてお話をしたところ、R博士は「あなたは嘘つきだ」と発言され会議は20分程で終了しました。R博士にとっては、前述のGB 50800のような無響室設計法が正しく、当社の無響室はそれに該当しないから嘘である。そのような薄いパネルや吸音クサビでは無響室は作ることは絶対に出来ないということのようです。筆者は長年無響室の業界におりますが、嘘つきと言われたのは初めてです。ですが、R博士の認識は間違っているとは言えません。R博士の認識が中国では常識だからです。

このように、中国では、無響室というものに対する認識が日本や欧州等とは違うようです。ただ、今後も続くであろう経済発展とともに、無響室に求められるスペックも高まってくる可能性はあると思います。そのような機会になったら、我々の出番かもしれませんね。

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