技術情報

無響室と波長の話

2024/07/30

無響室は室内から発生した音が跳ね返って来ないように設計されています。

その跳ね返って来ないことを吸音といい、跳ね返ってこない度合いを吸音率などといいます。

そのため、無響室は、室内吸音クサビという吸音材を床壁天井6面(半無響室は5面)全面に施工します。

なぜ跳ね返ってこないようにする必要があるのでしょうか?

換気扇を作る会社が、自社製換気扇の音を測定する場合、無響室ではない部屋、例えばオフィスの一角で測定したとしましょう。

換気扇の音は、壁やテーブル、窓などに反射してしまいます。反射した音は跳ね返ってきて測定器でその音を拾ってしまいます。そうなると、換気扇の本来の音が測定出来ないわけです。

無響室とは何か?を例える際に、砂漠のイメージがよく使われます。砂漠のように何も音の遮蔽物がないような空間、これが無響室に近いです。ですが、そのような空間で音を測定するのは不可能ですから、無響室が必要になります。

そして、無響室を設計する際に、どの周波数帯域の音が跳ね返ってこないようにするかが重要です。周波数は音の高さのことです。高い周波数ほど波長は短く、低い周波数ほど長くなります。これがどのように設計に影響するのかを以下、記載します。

無響室と波長の話

一般的理論として、吸音材の厚さは波長の1/4以上が必要です。
無響室に使用されることが多い、500ミリ厚の吸音材は、170Hz以上の周波数を吸音します。(!)それだけで吸音設計ができるわけではありません。わかりやすく説明するための目安です。

波長=音速÷周波数という式があります。
170Hzの波長は、340÷170=2m
2m×1/4=0.5m(500mm)

換気扇音の170Hz以上の音を無響室で測定する際には、無響室の吸音材の厚さは500ミリ厚が必要ということになります。一方で、170Hzよりも低い周波数の測定をするためにはもっと厚い吸音材が必要になります。

この最も低い測定周波数のことを「測定可能下限周波数」といいます。

あまりにも低すぎる測定可能下限周波数

先日、海外の電機機器メーカーから、「5Hzの音を測定するための無響室が欲しい」という問い合わせがありました。

5Hzの波長は大体68メートルになります。

前述の計算ですと、吸音材の厚さは17m必要になります。こうなると東京ドームくらいの無響室サイズが必要でしょう。

海外の案件では、このように現実的ではない低周波域を設定することが多い傾向にあります。

無響室を設置するスペースには限りがあるのが実状ですし、大きければ価格も比例して上がります。

設置スペースが5m×5m程度とすると、せいぜい200Hz〜くらいの測定しか出来ません。

このように、無響室と波長は深く関わっています。

無響室を導入検討する際には、波長を考慮した設計が必要ですので、現実と照らし合わせた正しい認識が必要になります。

ソノーラでは、無響室の基礎知識からユーザーの皆様にお伝え致します。お気軽にご連絡ください。

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