技術情報

音楽制作におけるデジタルディレイとは?

2025/03/01

日本のバンドback numberの『高嶺の花子さん』という曲のイントロ(0:26〜0:40)のギターのフレーズが印象的です。

back number – 高嶺の花子さん (full)
https://www.youtube.com/watch?v=SII-S-zCg-c

これは実際にこの通りに弾いているわけではなく、8分音符のフレーズに複雑な16分音符のような効果を与える仕組みになっています。

この効果を得るために使われているのがディレイ(Delay)です。

ディレイとは、音を一定時間遅らせて再生するエフェクトのことを指します。山に向かって「ヤッホー!」と叫ぶと、遅れて反響が返ってくる現象に似ています。音楽の世界では、リズムの強調や音の厚みを持たせるために広く活用されています。

筆者はギタリストとしての視点からディレイの魅力を解説しますが、音楽以外の分野でもこの技術が活用されていることをご紹介します。音楽に詳しくない方にもわかりやすく解説しているので、気軽に読んでみてくださいね。

ディレイの種類と原理

ディレイにはさまざまな種類が存在します。

アナログディレイ温かみのある音質が特徴ですが、長時間の遅延では高域が減衰する傾向があります
デジタルディレイ正確でクリアな音質を維持しながら、自由に遅延時間を設定することが可能です

その他、以下のようなディレイの種類もあります。

シンプルディレイ基本的な遅延効果を持つ
エコーディレイ山びこのように複数回音が繰り返される
モジュレーションディレイコーラスやフランジャー効果を加えたディレイ
マルチタップディレイ異なる時間差で複数の遅延音を発生させる

よく音楽で聴く付点8分ディレイとは?

さて、最初にご紹介した曲のディレイの効果は付点8分ディレイという手法です。 付点8分ディレイとは、8分音符の長さに「付点」が付いたリズムで遅延を加える手法です。これは通常の8分音符の1.5倍の長さとなり、リズムに独特のグルーヴを与えることができます。

付点8分音符の計算方法

付点8分音符(8分音符+16分音符=4分の3拍)

例えば、BPM120の楽曲で付点8分ディレイを使用する場合、

60(1分は60秒)÷BPM(Tempo)×1,000(1秒は1,000ms)×0.75(符点八分)=375msec(ディレイタイム)

となり、375ミリ秒の遅延が生じます。

これにより、単純なフレーズが幻想的なフレーズへと変化します。

実際にどのような効果が得られるのか、以下の動画を作成しましたのでご覧ください。

ディレイエフェクトとは?
https://www.youtube.com/watch?v=LclLpv9kvtw

音楽と他分野におけるディレイ技術の関連性

ディレイ技術は音楽以外の分野でも多く利用されています。

通信技術信号の送受信における遅延制御
映像編集音声と映像の同期調整
自動運転センサー情報の適切な処理タイミングの確保
医療機器心電図解析や超音波診断での遅延処理

音楽におけるディレイエフェクトと、これらの分野で使用されるディレイ技術には多くの共通点があります。

信号処理とタイミングの制御音楽のディレイは、入力信号を一定時間遅らせることでリズムや空間表現をコントロールします。通信や自動運転では、データの送信タイミングを調整し、最適な処理を実現します。
同期の重要性音楽ではディレイをリズムと同期させることで演奏に一体感を持たせます。映像編集では、音と映像を正確に合わせるためにディレイ技術が不可欠です。
リアルタイム処理とフィードバック制御ギターのディレイエフェクトはリアルタイムで適用される必要があります。同様に、自動運転では車両のセンサー情報を遅延処理しながら適切な判断を下します。
ノイズ処理と精度向上音楽制作では、不要なノイズを抑えながらディレイ効果を調整します。医療機器においても、心電図解析や超音波診断の信号処理でノイズを低減するためにディレイ技術が活用されています。

このように、音楽におけるディレイと産業技術でのディレイ制御には深い関連性があり、どちらも時間軸の制御という共通した目的のもとで進化を遂げています。

無響室との関連性

ディレイの音響特性を正確に測定するには、不要な反響を排除できる環境が必要です。無響室は究極のデッド空間であり、ドライソースを取得するためには最適な部屋ともいえます。無響室を使用することで、ディレイエフェクトのより科学的な解析や、音作りの精度向上が可能となります。

まとめ

ディレイは、単なるエフェクトではなく、音楽にリズムと奥行きを加える魔法のツールです。特に付点8分ディレイは、独特のグルーヴを生み出し、楽曲に洗練されたリズムの流れをもたらします。

しかし、ディレイの魅力は音楽だけに留まりません。通信技術や映像編集、自動運転、さらには医療機器にまでその応用範囲は広がっています。私たちの身の回りには、知らぬ間にディレイ技術が活かされているのです。

そして、ディレイを極めるなら、正確な音響分析が欠かせません。弊社の無響室を活用すれば、余計な反響を排除し、ピュアなディレイサウンドを徹底的に研究できます。
(個人で持つレベルでは中々ないですが・・・)

ディレイは単なるエフェクトではなく、時間を操ることで音楽やテクノロジーの世界を豊かにする重要な技術です。

音楽制作においても、最先端の技術分野においても、ディレイの可能性はまだまだ広がっています。

これからも、新たなアイデアと技術の融合によって、より進化したディレイの活用が期待されるでしょう。

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